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起訴から9年越しの“無罪”になった「LIBOR“不正”操作事件」元日本人被告【逆転の「国際手配3000日」#2】

有吉功一:ジャーナリスト、元時事通信社記者
【関連特集】日本企業を襲う「海外法務リスク」の戦慄 はこちら

#1から続くオランダの金融大手、ラボバンク東京支店のマネジングディレクターとして活躍していた本村哲也氏(52)の人生は、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利、ライボー)の“不正”操作事件で一変した。

2014年に米国で起訴されたが、日米犯罪人引渡条約に基づき、米国が身柄の引き渡しを要請してくることはなかった。ただ、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)に“赤手配”(Red Notice、国際指名手配)されている可能性もある。もし赤手配リストに掲載されていれば、国外に出た場合、身柄を拘束され、米国に移送されるのではないかとの不安があった。

赤手配リストは、ICPOのホームページでも確認できる。ただ、公開されず、秘密裏に手配されることもある。米国で起訴された後も出頭していないからには、赤手配ではないにしても、何らかの「ボーダーウオッチ」(出入国監視)下に置かれていると見るのが自然だった。

そのため本村氏は起訴後、10年間は日本から一歩も出ていない。

しかし、LIBOR事件で訴追された個人をめぐっては、2017年以降、米英両国で風向きが変わりつつあった。有罪判決などの取り消しが相次いだのだ。

15人中10人が「控訴棄却」相次ぐ“逆転”が追い風に

下記が有罪判決や起訴を取り消された一覧だ。

・2017年7月、ラボバンクのアンソニー・アレン、アンソニー・コンティ両人に対する有罪判決取り消し(米国)
・2021年1月、スイスの大手銀行UBSや米シティグループの東京法人を渡り歩いた英国人元トレーダーのトム・ヘイズ氏が刑期のちょうど半分で釈放(英国)

・2022年1~8月、ドイツ銀行のトレーダー4人に対する有罪判決取り消し(米国)
・2022年10月、UBSのトム・ヘイズ氏他1人の起訴取り消し(米国)
・2023年3月、仏ソシエテ・ジェネラルの元トレーダー2人の起訴取り消し(米国)

米国での有罪判決取り消しなどの根拠としては、英国で取り調べを受けた際に証言を強制されており、そうした証言が米国の裁判でも使われたとして、法の適正な手続きを規定する合衆国憲法修正第5条に反する点などが挙げられた。

この時点で、LIBOR事件に関与したとして米国で起訴された15人のうち、実刑が確定、もしくは禁錮刑なしに処分が確定していたラボバンクの4人と、本村氏を除く、10人までが公訴棄却を勝ち取っていた。

元同僚らの動向に本村氏も関心は示していた。が、自身も晴れて“無罪”になるとは期待していなかった。しかし――。

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