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【《週刊》世界のガバナンス・ニュース#17】碧桂園、米ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、米シカモア・パートナーズ、博報堂DYメディアパートナーズ、英スタンダード・チャータード銀行、米デルタ航空、米ジェットゼロ

中国不動産不況で経営難の碧桂園、海外債務再編に暗雲

中国国内の不動産不況の長期化を受け経営難に陥っている不動産大手、碧桂園(カントリー・ガーデン)の海外債務再編計画をめぐり行われていた主要債権者との交渉が、物別れに終わった。碧桂園は2月までの合意を目指していたが、価格や返済期限など条件面で妥結できなかった。

碧桂園は1月、取引関係のある主要7銀行との間で、海外債務再編案で基本合意。合意が履行されれば、116億米ドル(約1兆7000億円)の債務が削減される見込みだった。

しかしその後、債権者側が、債務を株式に転換する際の転換価格や返済期限などの条件に不服を表明。提示された価格が、現在の碧桂園の株価を大幅に上回っていることにも反発した。

碧桂園は不動産価格の下落が響き2022年に純損益が上場後初めて、赤字に転落。23年10月には、米ドル建て債の利払いが期限内に履行できず、デフォルト(債務不履行)と認定された。同年の赤字額は、日本円で4兆円近くに達した。

米老舗ウォルグリーンを投資会社が3.5兆円で買収・非公開化

米ドラッグストア大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは、米投資会社シカモア・パートナーズによる総額237億ドル(約3兆5000億円)の買収提案を受け入れた。ウォルグリーン株は非公開化され、意思決定の迅速化を図るなどして経営を立て直す。

発表によれば、シカモアはウォルグリーン株式を1株当たり現金11.45ドルで取得する。これは、米株式市場での3月6日の終値に約8%のプレミアムを乗せた水準。ウォルグリーンの株主は、同社傘下の医療サービス部門「ビレッジMD」の株式・社債が現金化されれば、さらに1株当たり最大3ドルを受け取る。

ロイター通信によれば、ウォルグリーンの時価総額は3月6日時点で93億ドルにとどまり、2015年以来、90%減少。医薬品の利益率が低下したほか、通販大手アマゾン・ドット・コムや小売り大手ウォルマートなどとの競争が激化。また、1901年創業の老舗企業であるウォルグリーンは、同業他社が医療保険や薬剤給付管理といった分野に事業を多角化する中、店頭販売が低迷しているにもかかわらず同業の買収に多額投資をするなど、戦略的にも失敗していた。

【米ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス】Walgreens Boots Alliance Enters into Definitive Agreement to Be Acquired by Sycamore Partners
https://investor.walgreensbootsalliance.com/news-releases/news-release-details/walgreens-boots-alliance-enters-definitive-agreement-be-acquired

博報堂DYメディア、英スタンチャート銀傘下の投資部門と提携

博報堂DYメディアパートナーズは、英スタンダード・チャータード銀行傘下のベンチャー投資部門SCベンチャーズ(本社シンガポール)と戦略的パートナーシップに向け、覚書を締結した。アニメ、漫画など日本の知的財産権(IP)の海外市場進出促進で提携する。

日本のアニメや漫画などの海外進出が進む中、特にインドネシアやシンガポール、タイなどアジア諸国や中東市場にはさらなる成長の可能性がある。博報堂DYメディアパートナーズとSCベンチャーズは、IP保有者とファンドマネジャーをつなぎ、機関投資家や認定投資家向けの投資機会を開拓する。

クリエーターがコンテンツを「トークン」化し、金融ライセンスを持つファンドマネジャーが世界中の投資家から資金を調達する、フィンテック活用の可能性も検討する。

【博報堂DYメディアパートナーズ】博報堂DYメディアパートナーズ、Standard Chartered BankのSC Venturesと、アニメやマンガをはじめとする日本IPの海外ビジネス拡大と加速を促す事業検討における覚書(MoU)を締結
https://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/service/20250305_36693.html

デルタ航空とジェットゼロ、「全翼機」の開発推進へ

デルタ航空と、先進的な翼胴一体型の「全翼機」の開発を手掛けているジェットゼロは、燃料効率の大幅向上を目指す「ブレンデッド・ウイング・ボディー」(BWB)機の開発で提携することで合意した。

BWBは抗力が小さく、揚力表面積が広いため、現行の「チューブ・アンド・ウイング」機に比べ、燃費効率が最大50%向上するとされる。既存のワイドボディー機と同等の250人超の乗客を収容できるほか、エンジンが機体上部に搭載されるため、騒音も大幅な軽減が期待されている。

デルタ航空は50年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロ(ネットゼロ)にする目標を掲げており、その達成のためBWBは有効とみている。

ジェットゼロは2027年の試験飛行を目指し、BWBの実物大試作機を製造する計画。23年には、米空軍の助成金を獲得した。デルタ航空としては、BWBの技術を実現可能なものとするため、提携を通じて運用上の専門的な知見を提供する。

機内設計はデルタ航空が主導し、各乗客専用の頭上荷物置き場やバリアフリーの座席・トイレを設置するなど、新機軸を打ち出す。

【デルタ航空】Delta, JetZero partner to design the future of air travel by advancing first-of-its-kind, 50% more fuel-efficient aircraft for domestic and international routes
https://news.delta.com/delta-jetzero-partner-design-future-air-travel

(毎週火曜日連載、次回#18は3月18日公開予定)

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