【2025年2月7日「適時開示ピックアップ」】Birdman、サンウェルズ、大洋テクノレックス、富士石油、タムロン

2月7日の東京株式市場は4日ぶりに反落した。日経平均株価の終値は、前日6日から279円安い3万8787円だった。円高・ドル安傾向を嫌気した。そんな2月7日の適時開示は、2025年3月期第3四半期決算の発表がピークを迎えこともあり、974件と多かった。これらの中から、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ。周辺情報も交えて紹介する。
ブランディング支援「Birdman」本社ビル一部解約で“特損”計上
東証グロース上場で、広告で販売促進やブランディングを支援するBirdman(バードマン、東京・渋谷区)は、 2025 年6月期第2四半期で解約違約金を特別損失として計上すると発表した。
同社によると、本社として使っている渋谷区・松濤のビルの一部フロアなどの賃貸契約を解除するため、解約違約金の減額交渉をした結果、2225万円で合意に達したという。
この賃貸契約は昨年4月に締結し、契約期間は5年間だったものの、バードマンは現在、あらゆる固定費の見直しを行なっていると説明している。 同社の24年6月期決算を見ると、売上高が前期比53%減の20億8500万円で、営業損益は18億円4000万円、当期純損益が30億2800万円の赤字を計上している。
【Birdman】特別損失(解約違約金)の計上に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250207567268.pdf
「サンウェルズ」訪問看護“不正請求”報道を認定する調査委報告
東証プライム上場でパーキンソン病専門の有料老人ホーム や訪問看護事業を営むサンウェルズ(石川・金沢市)は、共同通信が報じた「過剰な診療報酬請求」という記事をきっかけに立ち上げた特別調査委員会の調査報告書を公表した。
報道の直後、サンウェルズは「報道にかかる事実は一切ない」との見解を公表したが、事実はどうだったのか。
辺誠祐弁護士(長島・大野・常松法律事務所パートナー)が委員長を務める特別調査委が作成した報告書によると、看護師が1人で施設を訪問しているのに複数人で訪れたことにして診療報酬を請求するケース(日中分)が、42施設中36施設であったことを確認し、その加算額は2億9200万円と判断した。
このほか、看護師が数十秒から数分、入居者の確認をしたり、センサーの画面を事務室で確認したりしただけの場合でも、複数人で約30 分訪問したことにして診療報酬を請求していたこともあったという。
また、内部通報も受けて社内調査が行われたが、「指導・改善がなされている」と詳細な調査をしていなかったことも判明した。調査委は再発防止策として、内部監査室による監査機能の強化などを求めている。
サンウェルズは2月12日に有価証券報告書を訂正するとしているが、今回の問題は昨年9月の共同通信による報道が発端。しかし同社は当初、「報道にかかる事実は一切ない」と疑惑を否定。ところが、かような調査結果となった。
【サンウェルズ】特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250207567245.pdf
和歌山「太洋テクノレックス」が“55歳以上”の希望退職者募集
東証スタンダードで電子基板の太洋テクノレックス(和歌山市)は、55歳以上を対象に希望退職者を募ると発表した。3期連続で営業赤字となったためで、構造改革を推し進める。
人数は15人。割り増しの加算金を支給する。希望退職は通常、「50歳以上」と一定の年齢を区切って行われる。しかし、これらの手法に「年齢差別では」との声も出始めている。
【太洋テクノレックス】希望退職者募集に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250129557609.pdf
「富士石油」による完全子会社化で消える名門“アラビア石油”
東証プライム上場の石油精製、富士石油は4月1日、完全子会社のアラビア石油を吸収合併すると発表した。1958年に設立され、一時サウジアラビアなどに原油の採掘権を持っていた「アラ石」は解散することになる。
アラ石は、「アラビア太郎」や「山師太郎」と言われた実業家、山下太郎が設立。中東で数多くの石油開発に当たったが、1967年の死後、権益の更新が順調に進まず、03年のクウェートを最後にいわゆる“日の丸油田”はなくなっていた。
なお、富士石油の筆頭株主は出光興産の21.79%で、クウェートおよびサウジ政府が大株主として各7.43%を保有する株主構成となっている(24年9月末時点)。
【富士石油】子会社であるアラビア石油株式会社の吸収合併に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250205563848.pdf
「タムロン」元社長の経費不正を受け“監査等委員”の権限強化
東証プライムのレンズ製造大手、タムロン(さいたま市)は2023年秋に発覚した社長(当時)による経費の不適切な使用に関し、再発防止策の進捗状況を公表した。
同社はその中で「再発防止策の対応は全て完了し、運用フェーズへと移行している」と順調に進んでいることを強調した。
注目されるのは、 社長の指示と監査等委員の指示が衝突したり、異なったりした場合、「監査等委員の指示が優先される」ことを社内規定で定めたこと。 不祥事において、監査等委員の権限が社長の力を上回ることが明示されるケースはほとんどなく、コーポレートガバナンスの在り方に一石を投じそうだ。
【タムロン】再発防止策の進捗状況に関するお知らせ(第3回)
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120250206565618.pdf
(平日連載、2月10日公表分に続く)
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