【2024年11月21日「適時開示ピックアップ」】バロックジャパン、電業社機械製作所、JR九州、BEENOS、ファナック
11月21日の東京株式市場は続落した。日経平均株価は前日比326円安い3万8026円で引けた。米半導体大手のエヌビディア(NVIDIA)が20日に発表した2024年8〜10月期の決算は好調だったが、日本株の反応はいまひとつで、売り買いが交錯した。そんな21日の適時開示は131件。この中からコーポレートガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップ、周辺情報も交えてお送りする。
服飾「バロックジャパン」中間決算赤字で役員報酬減額
東証プライムで、女性向け服飾や雑貨を手掛けるバロックジャパンリミテッド(東京・目黒区)は、赤字だった2025年2月期の中間決算の責任をとる形で経営陣の報酬を減額することを決めた。「真摯に受け止め、その経営責任を明確にする」としている。
村井博之社長が35%を減額するほか、副社長が30%、常務執行役員が25%、執行役員が20%となっている。対象期間は24 年12月分~25年2月分。
10月15日に公表した同社の中間決算では、売上高は前年同期比2.6%減の277億1300万円で、3億9000万円の純損失だった。前年同期は5億9600万円の純利益を出しており、赤字転落した。
【バロックジャパンリミテッド】役員報酬の減額に関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241119526293.pdf
架空契約書不正「電業社機械製作所」で印鑑の管理強化
東証スタンダードでポンプや送風機製造の電業社機械製作所(東京・大田区)は、不祥事の再発防止対策の実施状況について公表した。
同社では、架空の工事契約書の策定などが発覚。今年4月、特別調査委員会(委員長=結城大輔弁護士・公認不正検査士=のぞみ総合法律事務所所属)が報告書をまとめ、施錠されていない机の中にあった東北支店長の印鑑を同支店の課長が勝手に使って架空の契約書をつくっていたことが分かった。
今回、公表した実施状況では、印章の保管や押印手続きを定めたほか、コンプライアンスの取り組みの強化や内部通報制度の実効性向上策など計10項目を列挙している。
【電業社機械製作所】再発防止策の進捗状況に関するお知らせ(開示事項の経過)https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241120526759.pdf
「JR九州」高速船浸水隠しで調査報告書
東証プライムのJR九州は、今年8月に発覚した同社グループの高速船「クイーンビートル」の浸水隠しについて第三者委員会の調査報告書を受け取ったと公表した。
公表された報告書では、今年2月に子会社のJR九州高速船の社長や運航管理者らが浸水の状況を踏まえて対応を協議。この時、国土交通省・九州運輸局に浸水の事実を報告すれば直ちに運航を停止するよう要請されるに違いないと考えたという。
ところが、博多-釜山を往復する高速船では、韓国の旧正月に当たる2月が繁忙期で、多くの韓国人が乗船を予約しており、「経過観察をしながらクイーンビートルの運航を継続したとしても安全上の問題はない」と考えたことが記されている。
また、クイーンビートルでは2023年2月にも浸水が発覚して行政処分を受けていた。JR九州は「『まずは第一報』を徹底実行する」などと方針を示したが、これらを守らなかったことが指摘され、調査報告書は「JR 九州高速船の幹部や船長に、かかる理解が十分浸透していなかったことによると言わざるを得ない」と断じた。
今回の浸水隠しで国交省は今年9月、同社に対し、行政処分である「輸送の安全確保命令」を発出し、安全統括管理者と運航管理者の解任命令も出した。
第三者委員会の委員長は尾崎恒康弁護士(西村あさひ法律事務所)で、委員は田中庸介弁護士(田中法律事務所)、関根博氏(船舶事故保険のトーマス・ミラー社)が務めた。
JR九州は11月21日、「調査結果及び提言を真摯に受け止め、速やかに再発防止策等の検討を進める」とのコメントを出した。ただ、海上保安庁の捜査も進行中で、今後もJR九州の経営に影響を与えそうだ。
【JR九州】第三者委員会調査報告書の受領のお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241120526840.pdf
「BEENOS」取締役選任などの株主提案に反対表明
東証プライムで電子商取引を支援するBEENOS(ビーノス、東京・品川区)の取締役会は、今年12月開催の株主総会に提案された株主提案について、いずれも反対することを決めた。
株主提案は2法人から出されたもので、このうちの1社である独立系投資会社のヴァレックス・パートナーズは、元アマゾンジャパン幹部ら2人の社外取締役の選任を求めてきた。これに対して、BEENOS側は「会社提案が取締役会の構成として最適」と反対理由を説明。
元アマゾンジャパン幹部についても「グローバル企業での勤務経験が豊富であり、一定の知見を有していると認識した」としながらも、「当社取締役会にはグローバルビジネスなどの知見を十分に有する取締役が複数おり、これを補完するものではない」との見解を示した。
ちなみに、もう株主提案をした1社はAVI JAPAN OPPORTUNITY TRUST PLC(AJOT)で、英国の投資会社アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)が立ち上げた日本市場特化型のファンド。2020年にはエレベーター製造大手、フジテックにも株主提案を行っており、コーポレートガバナンス改革で企業業績を向上させることを旨としているという。
【BEENOS】株主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせhttps://www.release.tdnet.info/inbs/140120241121527396.pdf
「ファナック」が“不適切製品試験”めぐる調査報告書を公表
東証プライム上場で世界的工作機械メーカーと知られるファナックは、欧州向けの製品で不適切な試験などの疑いが発覚した問題で、特別調査委員会の報告書を公表した。実際に規格に準拠しない試験や、恣意的な操作による合格した事例があったしている。
原因について報告書は、①販売の開始日を守るというプレッシャー、②コスト削減圧力、③品質不正に関するリスク認識の不足、④ファナックの基本理念である「厳密と透明」の不徹底――などを挙げている。
そのうえで、「悪い情報ほど早くトップに報告し、会社の総力を挙げて問題解決にあたることが重要である」と指摘し、法令遵守に必要な人員や、必要な物資や設備のための資金といったコストを受け入れることを求めている。
委員長は超精密切削・研磨加工の専門家である堀尾健一郎・埼玉大学名誉教授が務め、委員は電子工学専門の浅井秀樹・静岡大学名誉教授と、元東京高裁長官の吉戒修一弁護士(TMI総合法律事務所)という重厚な布陣。
ファナックについては、風光明媚な富士山麓の山梨・忍野村に本社工場を置いていることもあってか、長く情報公開に消極的とされていたが、一転、10年近く前からはIR(投資家向け広報)を強化するとしてきた。
なお、現在の取締役会長は、サラリーマンながら創業者として同社に君臨した稲葉清右衛門氏(20年死去)の嫡男、稲葉善治氏(76歳)。その嫡男(清右衛門氏の孫)もファナックに入社し、30代の若さで取締役に抜擢されたが、今夏、ひっそりと同社を退社したことが報じられていた。
オーナでもない“サラリーマン創業家”が3代の御代を築くかと思われたファナック。そんなグローバル企業の統治形態の変遷は、コーポレートガバナンスの観点からも要注目と言える。
【ファナック】特別調査委員会の調査結果報告書の受領及び今後の対応について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241121527152.pdf
(平日連載、2024年11月22日公表分に続く)
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