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【2024年10月16日「適時開示ピックアップ」】LIEH、サイゼリヤ、日本甜菜製糖、UEX、ライフネット生命

10月16日水曜日の東京株式市場は5営業日ぶりに下落した。前日比で730円安い3万9180円で引けた。オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLの第3四半期決算が予想を大きく下回り、売りが先行した。そんな16日の適時開示は116件で、前日の512件に比べると大幅に少なかった。この116件の中からコーポレートガバナンスやリスクマネジメントなどで注目されるリリースをピックアップし、周辺情報も交えてお送りする。

食品流通「LIEH」前社長vs.会社の争いで10月だけで5件の開示

東証スタンダード上場で食品流通業のエルアイイーエイチ(LIEH)は、株式交換をめぐって前社長が東京高裁に申し立てていた抗告が棄却されたと発表した。この株式交換は、LIEHが障がい者就労支援施設を運営する会社(千葉県松戸市)を完全子会社化するためのもので、大株主で前社長の福村康廣氏が差し止めを求める仮処分を申し立てたが、東京地裁が却下。これを受けて福村氏が東京高裁に抗告していた。

福村氏は、社長時代に不適切な支出があったとして今年8月に社長から解職され、会社側から損害賠償を求められている。下記Governance Q記事の通り、LIEHは10月に入ってからこの問題の関連で5件の適時開示を出している。

【エルアイイーエイチ】株主による株式交換差止の仮処分命令の申立ての却下決定に対する抗告及び 抗告の棄却に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241016599063.pdf

《関連記事①》2024年10月11日「適時開示ピックアップ」
https://cgq.jp/series/jpx/5622/

《関連記事②》2024年10月8日「適時開示ピックアップ」
https://cgq.jp/series/jpx/5562/

「サイゼリヤ」が金品要求型のウイルス“ランサムウェア”から攻撃

東証プライムの外食チェーン、サイゼリヤは、金品を要求するウイルス、ランサムウェアの攻撃を受け、個人情報などが一部漏洩した可能性があると発表した。サーバーを停止し、一部の業務に影響が出ているという。漏洩したとみられるのは、従業員(パート・アルバイト含む)と取引先の個人情報などで、顧客のクレジットカードやポイントカードの情報は含まれていないという。警察に相談している。

【サイゼリヤ】当社におけるランサムウェア被害に伴う サービスの一部停止と情報漏えいに関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241016598983.pdf

「日本甜菜製糖」北海道の“砂糖原料工場”で火災

東証プライム上場の日本甜菜製糖(にっぽんてんさいせいとう)は、北海道の士別製糖所で火災があったと発表した。10月15日午前4時頃にビートパルプ工場のパルプ乾燥設備より出火し、同10時頃に鎮火。人的な被害はなかった。現在、設備への被害を調査している。同社は「関係者の皆様にご迷惑、ご心配をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます」とのコメントを出した。

甜菜はビートとも呼ばれ、砂糖の原料となる。同社は甜菜から砂糖をつくっている。日本の砂糖類の半分は輸入に頼っているものの、残り4割は北海道だけで採れる甜菜で、あと1割が沖縄や鹿児島のサトウキビが原料。2023年は甜菜が不作で、食糧自給率を低下させる要因となった。

【日本甜菜製糖】当社士別製糖所における火災発生について
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241016598978.pdf

ステンレス商社「UEX」が貿易保険不正受給で第三者委員会を設置

東証スタンダード上場でステンレやチタンを扱う商社のUEX(ウエックス)は、今年4月に公表した貿易保険の不正受給について、弁護士3人による「第三者委員会」を立ち上げて調査することを発表した。これまで社内の調査委員会で対応していたが、中立で客観的な調査で原因を究明する必要があると判断。社内の委員会を引き継ぐという。調査には3カ月ほどかかる見通しだ。なお、第三者委委員長は元広島高検検事長の酒井邦彦弁護士で、このほか、酒井氏と同じTMI総合法律事務所の森川久範、吉井久美子両弁護士が委員を務める。

UEXによると、2019年5月から20年2月にかけて韓国向けの鋼材輸出で韓国企業から代金支払いの遅延があったとして同社は日本貿易保険(NEXI)から保険金1億6978万円を受け取った。ところが担当の社員から、これが事実と異なる不正な申請だったといの申し出があった。謝罪の上、全額返還していた。

【UEX】第三者委員会設置に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241015598343.pdf

「ライフネット生命」がサステナビリティ委員会を設置

東証グロース市場のライフネット生命保険は、社内に「サステナビリティ委員会」を設置したと発表した。委員長は森亮介社長が務める。多様性や社会的な責任などを盛り込んだ9項目の基本方針も定めた。同社は「企業としての説明責任を果たすため、地球環境、人的資本、ガバナンスなどのサステナビリティに関連する事項について、適切な情報開示に取り組む」としている。

2008年に開業したライフネット生命は、日本生命出身の出口治明氏らが創業したネット保険の草分け的存在。読書家としても知られる出口氏は会長を退任後、立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)の学長に就き、「サステナビリティ観光学部」を新設して退任した。今、多くの上場企業がサステナ委員会を設けているが、事業の継続性や環境・人権・社会問題の解決に向け、ほかの会社と違いを出せるか、注目される。

【ライフネット生命保険】ライフネット生命保険 サステナビリティに関する基本方針の策定及び サステナビリティ委員会の設置についてのお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/140120241016598833.pdf

(平日連載、2024年10月17日公表分に続く)

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