【2024年9月27日「適時開示ピックアップ」】東京衡機、東北新社、川崎重工 他
石破茂氏が自民党新総裁に選ばれてから初めての取引が始まった東京株式市場。日経平均は一時、1800円を超える暴落ぶりで大混乱の様相を呈しているが、先週9月27日金曜日は271件の上場企業等による適時開示があった。その中から、コーポレートガバナンスやリスクマネジメントに関するものをピックアップ、周辺情報とともにお送りする。
売り上げの過大計上「東京衡機」の先行き不透明
■東証スタンダード市場の計測機器メーカー、東京衡機は9月30日に管理銘柄(審査中)に指定される可能性を明らかにした。30日に東証に「内部管理体制確認書」を提出し、改善が認められなければ上場廃止となる恐れがあるとして管理銘柄(審査中)になると説明している。同社は、売り上げの過大計上で金融庁から昨年6月に1200万円の課徴金納付命令を受けるなどしたが、それに先立つ同年3月末から特設注意銘柄(現・特別注意銘柄)に指定されていた。「特別注意銘柄および監理銘柄(審査中)の指定を解除できるよう、役職員一丸となって最大限の努力をしていく」とのコメントも出しているが、先行きはどうなるか。
菅元首相長男の接待不祥事から3年「東北新社」の子会社リストラ
■東証スタンダード上場で映画やテレビ番組、CMなどを制作する東北新社が、子会社の一部事業から撤退すると発表した。子会社はオムニバス・ジャパンで、バラエティ番組を中心としたポストプロダクション事業から撤退する。ポスプロは、映像制作の中で収録済みの素材を加工や仕上げをする後工程に当たる事業。東北新社によると、テレビ番組の制作費などが縮小し、ポスプロ事業の収益が減っていた。このため、「業績の早期改善は困難」と判断し、 新橋や渋谷の拠点からも撤退する。撤退する事業の売上高は約17億円で、80人枠で希望退職者の募集も始めるという。
ちなみに、東北新社と言えば、菅義偉政権だった2021年、同社に勤務する菅氏の長男が関与する形で総務省幹部を接待していたことが『週刊文春』報道などで発覚。当時の創業家社長が辞任する一方、接待を受けた総務省幹部も懲戒処分を受けた。中でも同省出身の山田真貴子内閣広報官(当時)も辞職に追い込まれ、俄かに注目を集めた経緯がある。
【東北新社】連結子会社における一部事業撤退及び希望退職者募集に関するお知らせ
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2329/tdnet/2505101/00.pdf
川崎重工が「船舶用エンジン不正」で中間報告
■川崎重工業が今年8月に発覚した船舶用エンジンの検査に絡む不正について、中間報告を公表した。調査対象にした674台のうち、1台を除く673台で燃費などデータの改竄が行われていた。川重グループでは2020年度にも検査不正があり、この時、一斉点検を実施したが、船舶用は発覚しなかったという。同社によると、船舶用エンジンの製造や検査に携わった関係者は不正を認識していたが、会社側は把握できなかった。今後、組織風土に踏み込んで再発防止策を策定する。2017年に神戸製鋼所と日産自動車で、いわゆる「品質・検査不正」が発生して以来、スバルや三菱電機など日本を代表するメーカーで絶え間なく同種の不正が続いており、いまだ収まる気配がない。
【川崎重工業】(開⽰事項の経過)舶用エンジンにおける検査不正について
https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_240927-1.pdf
RSテクノロジーズ「CGコード」に基づいたTCFD対応を公表
■東証プライム上場で半導体材料を手掛けるRS Technologies(RSテクノロジーズ)は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みで同社の対応を公表した。2200年に平均気温が4度上昇するシナリオでは、事業所の拠点の被害についてハザードマップを用いて調査。直接的な被害は想定されないものの、洪水や高潮による通勤経路の遮断で営業停止に陥るリスクが確認されたという。その場合、主力のウェーハ再生事業の国内主要拠点である三本木工場(宮城県)が被災し営業停止を余儀なくされた場合、台湾にある子会社で日本国内の需要を一時的にカバーするなど、日本・台湾・中国の 3 拠点の分散体制を構築するとしている。なお、2021年6月に改定された「コーポレートガバナンス・コード」では、プライム市場の上場企業にTCFDの枠組みを使った情報開示を求めており、今回のRSテクノロジーズの開示はそれに応じたもの。
【RS Technologies】気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく情報開示について
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS02916/fd60b12b/15a2/4b06/b16e/80788c8fef22/140120240927589864.pdf
(平日連載、2024年9月30日公表分に続く)
関連記事
ピックアップ
- 【2024年10月9日「適時開示ピックアップ」】太洋物産、セブン&アイ、富士精工、タカキュー…
10月9日水曜日の東京株式市場は反発した。日経平均は3万9277円で取引を終えた。この日の適時開示は152件。この中からコーポレートガバナン…
- 【11/8(金)15時 無料ウェビナー】「品質危機」への警鐘《品質不正とガバナンスの最前線・連続ウェ…
本誌「Governance Q」と日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)共催無料連続ウェビナー「品質不正とガバナンスの最前線:公認不…
- 【ガバナンス道場#3】“ポリスマン”か“アドバイザー”か、それが問題だ!?「価値創造・戦略に貢献する…
三宅博人:公認会計士 長年にわたりサステナビリティやガバナンスの実践と研究に携わる孤高の求道者、「マッチョ三宅」こと公認会計士の三宅博人氏の…
- 「踊る大捜査線 THE MOVIE」とコンダクト・リスク【遠藤元一弁護士の「ガバナンス&ロー」#2】…
遠藤元一:弁護士(東京霞ヶ関法律事務所) 「事件は会議室で起きてるんじゃない!」の名台詞 9月末、地上波で放映された1998年公開の劇場版「…
- 【10/18(金)15時 無料ウェビナー】品質不正における内部通報制度の死角:その課題と対応《品質不…
本誌「Governance Q」と日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)共催無料連続ウェビナー「品質不正とガバナンスの最前線:公認不…
- 起訴から9年越しの“無罪”になった「LIBOR“不正”操作事件」元日本人被告【逆転の「国際手配300…
有吉功一:ジャーナリスト、元時事通信社記者【関連特集】日本企業を襲う「海外法務リスク」の戦慄 はこちら (#1から続く)オランダの金融大手、…